糖尿病
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50 巻, 8 号
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原著
  • —18カ月間の長期治療効果の検討—
    後藤 広昌, 弘世 貴久, 清水 友章, 三田 智也, 五十嵐 康宏, 藤谷 与士夫, 田中 逸, 綿田 裕孝, 河盛 隆造
    2007 年 50 巻 8 号 p. 591-597
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    スルホニル尿素薬を極量から準極量服用している2型糖尿病患者で1年以上HbA1c 7.5%以上が継続している44名(男27名/女17名,平均HbA1c 9.7±1.6%)に対して,朝食直前あるいは眠前にインスリングラルギン皮下注射投与を追加し,18カ月間の治療効果を検討した.
    投与開始6カ月後にHbA1c 7.0%以下に改善していた群(改善群,n=11,平均HbA1c 6.7±0.3%)と投与開始6カ月後にHbA1c 7.0%以下を達成されなかった群(非改善群,n=16,平均HbA1c 8.3±1.2%)に分けて解析したところ,改善群では18カ月後においても6.9±0.6% (p<0.001)と投与開始前と比べ治療効果は継続しており,インスリングラルギン使用量も6カ月後から有意な増加を認めなかった.一方非改善群ではインスリングラルギン使用量が6カ月から有意な増加を認めていた(9.3±4.8単位⇒14.3±7.1単位,p=0.001)にもかかわらず,18カ月後においても8.3±1.3% (p=0.002)とさらなる改善は認められなかった.
    本治療に対する短期間での反応良好群は18カ月の長期に渡ってもインスリングラルギンの増量なく良好なコントロールを継続している症例が大部分を占め,インスリン頻回注射療法の導入が困難な症例に対して有効な治療法であると考えられた.
  • 池内 央子, 西尾 善彦, 中尾 恵子, 卯木 智, 前川 聡, 柏木 厚典
    2007 年 50 巻 8 号 p. 599-604
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    前腕部plethysmographyは,従来の血流依存性血管拡張測定法より良好な再現性が得られ,低侵襲かつ簡便な血管機能測定法である.これを用いて,2型糖尿病入院患者24名の前腕部反応性充血における最大血流増加率と,血糖管理指標,合併症,入院1週間の治療効果との関係を検討した.ステップワイズ多変量解析の結果,入院時の最大血流増加率は血糖値・総コレステロール値・細小血管合併症数・mean IMTとの間に相関がみられた.一方,治療により血糖値,血清脂質,最大血流増加率はいずれも有意に改善し,治療後の最大血流増加率は細小血管合併症数・baPWV·BMIのみと負の相関を認めた.以上から,2型糖尿病患者では可逆性の血管機能異常が存在し,短期間の代謝異常治療により改善する異常と,短期間では改善しがたい異常が併存することが示唆された.
  • 新田 愛, 瀬戸 雅美, 浜野 久美子
    2007 年 50 巻 8 号 p. 605-610
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    最近,多列化により空間的時間的解像度の進歩著しいMSCT (Multi-slice CT)を糖尿病の冠動脈狭窄の診断に応用し有用性を検討した.冠動脈疾患の診断が臨床上必要と考えられた2型糖尿病患者20名(平均年齢69.6歳,HbA1c 8.8%)に64列MSCTと冠動脈造影(CAG)を併行して実施した.冠動脈をLMTおよびRCA, LAD,回旋枝各3セグメント計10部位にわけ,CAGとの診断一致率を比較した.MSCTは200(10×20名)部位中,石灰化などの影響を受けずに読影し得た181部位(90.5%)のうち50%以上狭窄を有意とすると29部位で狭窄ありと診断,感度79.3%,特異度96.1%であった.この結果より冠動脈狭窄ハイリスクと考えられた糖尿病患者においてもMSCTで正常なら,臨床上問題となる冠動脈狭窄は概ね否定しうると考えられた.糖尿病患者における冠動脈疾患の診断法として非侵襲的という観点からMSCTの有用性は高い.しかし,石灰化病変により読影不能な部位の存在やこれまでの報告に比してやや低い感度は糖尿病におけるスクリーニングとしてMSCT応用のうえで今後の課題となる.
  • 大森 将, 吉成 元孝
    2007 年 50 巻 8 号 p. 611-616
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    公立学校教職員を対象とした人間ドックの成績を基に,1992年から2003年まで11年間の糖代謝異常有病率の年次推移を検討した.対象は当院宿泊ドックを受診した九州沖縄地区の公立学校共済組合員で,年間平均受診者数は男性3,444名,女性1,555名である.糖尿病(型)および境界型は,問診および75 g経口糖負荷試験の成績から日本糖尿病学会診断基準(1999年)により判定した.食事療法および薬物治療中の者は糖尿病に分類した.年齢調整した男性の糖尿病有病率は,1992年の5.4%から2003年の8.9%に有意に増加した(p<0.0001). 境界型有病率も同期間に14.8%から21.7%に有意に増加した(p<0.0001). 女性も同様に,糖尿病は1.8%から3.1%に(p<0.05), 境界型は8.0%から12.0%に有意に増加した(p<0.0001). 男性では,肥満の有病率が増加しており,糖代謝異常増加の一因と考えられた.
症例報告
  • 種田 紳二, 三沢 和史, 松橋 尚生, 土田 健一, 名和 伴恭, 秋元 祐子, 坂東 秀訓, 中山 秀隆, 萬田 直紀
    2007 年 50 巻 8 号 p. 617-622
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.2型糖尿病患者.他院にてヒトインスリン治療後4年間治療中断.当院受診時高血糖のため入院下でインスリンアナログにて治療し,また中断.5カ月後またインスリンアナログ治療再開後数日で注射部位の発赤・腫張を呈する局所の即時型アレルギーを呈した.検査上ヒトインスリンに対する特異型IgE抗体が著明に上昇していた.各種インスリン製剤での皮内反応の結果,被検ヒトインスリン,インスリンアナログすべてに陽性反応を示した.またインスリン抗体の上昇を伴い,インスリンアナログ治療再開後4週間ほどで昼食前,夕食前の低血糖を呈し,インスリン減量にても低血糖抑えられずインスリンを離脱.離脱後20日まで主に夕食前の低血糖を経験した.この間インスリン抗体は著明な高値をとり続け,離脱後1年を経てもまだ陰性化していない.低血糖はインスリン抗体が高titerである時期に起こり,インスリン抗体が何らかの役割を果たしているものと考えられた.本症例はヒトインスリン,インスリンアナログ2度の治療中断後に再開したインスリンアナログ治療によってIgE型,IgG型両方の免疫反応を呈し,それが低血糖に関連した興味ある症例と考えられた.
  • 中島 千鶴, 橋口 裕, 福留 美千代, 池田 優子, 中崎 満浩, 鄭 忠和
    2007 年 50 巻 8 号 p. 623-626
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.平成18年5月中旬よりαリポ酸を含む健康食品を摂取していた.6月初旬より動悸と手指の振戦を自覚,補食にて症状の消失を認めていた.6月中旬の空腹時血糖は92 mg/dl, インスリン抗体結合率は95%であった.HLAはDRB1 *0406を有し,Scatchard解析によるインスリン抗体のhigh affinity siteの親和性は0.067×108 l/mol, 結合能は27.3×10-8 mol/lであった.過去にインスリン使用歴はなく,インスリン自己免疫症候群と診断した.6分食を開始し,低血糖症状は消失した.インスリン抗体結合率は6カ月後31.9%に減少した.αリポ酸の還元型であるジヒドロリポ酸はin vitroにおいてインスリン分子のS-S結合に作用し,分子構造を修飾した.αリポ酸は健康食品として広く普及しており,インスリン自己免疫症候群の誘因として留意すべきと考えられた.
  • 本間 ふみか, 和田 典男, 吉岡 成人, 小池 隆夫
    2007 年 50 巻 8 号 p. 627-630
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性.11年の糖尿病罹病期間があり,インスリン治療を受けていた.糖尿病腎症による浮腫を主訴に精査,加療のため入院した.入院時の腹部CTにて偶然,右副腎に23×13 mmの腫瘍を認めたが,クッシング症候群に特徴的な身体所見は認めなかった.早朝空腹時血漿ACTH 5 pg/ml未満,血清コルチゾール14.6 μg/dlでありそれぞれの日内変動は消失していた.さらに,デキサメサゾン1 mg, 8 mgにて血清コルチゾールは抑制されなかったことからプレクリニカルクッシング症候群と診断し,当院泌尿器科にて腹腔鏡下副腎摘出術を施行した.腫瘍の割面は黒色であり,病理組織所見と併せblack adenomaと診断した.術後ハイドロコルチゾン10∼20 mgを補充し,血圧の著明な低下,HbA1cの改善を認めた.black adenomaによる副腎性プレクリニカルクッシング症候群の報告は検索したところ3例のみであり,文献的考察を加えてここに報告する.
コメディカルコーナー・原著
  • —その頻度および臨床的特徴—
    奥田 昌恵, 横田 友紀, 菅野 咲子, 多田 純子, 石村 郁恵, 山下 りさ, 中村 公英, 横山 宏樹
    2007 年 50 巻 8 号 p. 631-634
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病において脂肪肝はインスリン抵抗性や動脈硬化症,メタボリックシンドローム(MS)との関連が考えられている.2型糖尿病患者298例に腹部超音波検査を行い,脂肪肝の有無を検討し臨床的特徴をアルコール摂取量の評価も含め分析した.135名(45%)に脂肪肝を認め,脂肪肝合併例は,年齢,糖尿病罹病期間,GOT/GPT比が有意に低く,BMI, 体重,腹部肥満率,HbA1c, HOMA-IR, 拡張期血圧,総コレステロール,中性脂肪,γGTP, MS合併率が有意に高かった.アディポネクチン,IMT, PWV, 尿アルブミンは,両群間で差はなかった.アルコール摂取量は脂肪肝合併と有意な関連を示さず,アルコール非摂取者186名のうち89名(47%)に脂肪肝を認めた.多変量解析では,脂肪肝と最も関連する因子はBMIであり,以下GOT/GPT(負),中性脂肪,年齢(負),罹病期間(負)が有意であった.若年,肥満,罹病期間が短い2型糖尿病に脂肪肝を高率に認め,治療管理の指標として脂肪肝は重要であると考えられる.
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