2008 年 51 巻 1 号 p. 9-13
症例は6歳6カ月の男児.滑脳症に伴う重症心身障害児である.コミュニケーションはほぼ不能で混合型四肢麻痺を認め寝たきりの状態であった.経口摂取不能のため以前から経鼻十二指腸カテーテルによる経腸栄養とされていた.発熱の後に下痢が出現し,その後傾眠傾向,多尿および唾液分泌量低下を認めた.再び発熱したため他院を受診,血糖値919 mg/dl, HbA1c 8.3%であり糖尿病と診断され,血糖コントロールの目的で当科に入院した.内因性インスリン分泌は保たれ,GAD抗体,IA-2抗体,ICAは陰性であった.約13.5時間におよぶ夜間の持続経腸栄養に対して持続皮下インスリン注入療法(CSII)を用い良好な血糖コントロールを得て退院した.CSIIの利点の1つは安定したインスリン血中濃度を保持できることである.その利点を生かすことにより良好な状態が得られる症例には1型糖尿病に限らずCSIIを検討すべきと考える.