症例は40歳,男性.10年前に高血糖,脂質異常症を指摘されるも放置.健診にてTC 600 mg/dl, TG 7,761 mg/dl, HbA1c 10.3%, およびBMI 30.9 kg/m2を指摘され当科入院.リポ蛋白PAG電気泳動にてMIDBANDの存在,RLP-CとアポEの増加,LDL-Cの減少を認めたが,アポEフェノタイプはE3/2であった.眼底異常,総頸動脈内膜中膜複合体の肥厚,運動負荷心電図異常等の臨床検査では動脈硬化の進行所見は認められなかったが,腎組織において光顕上細動脈の硝子化,糸球体血管極の血管増生,電顕上基底膜の肥厚が認められ糖尿病性腎症および細動脈硬化性腎硬化症の所見であった.糖尿病,肥満や脂質異常症等の動脈硬化惹起性の高い症例においては,臨床検査では動脈硬化進行の所見がなくとも腎組織においては既に形態的な変化を来しており,早期からの生活習慣管理が重要である.