2008 年 51 巻 7 号 p. 623-628
症例は25歳,女性.右眼痛,羞明,結膜充血のため近医でぶどう膜炎と診断,加療されたが軽快しないため当院眼科受診.血糖444 mg/dl, HbA1c 15.8%と異常高値で糖尿病性ぶどう膜炎を疑われ当科に緊急入院.膵島関連自己抗体は陰性だがインスリン分泌は枯渇しており,特発性1型糖尿病と診断し強化インスリン療法を導入した.血糖コントロールに伴いぶどう膜炎は速やかに軽快,退院したが退院後に右眼の糖尿病網膜症の急速な進展と黄斑症による視力低下を来した.黄斑症に対し局所網膜光凝固を行ったが,その後に網膜前出血を合併した.糖尿病眼合併症としてのぶどう膜炎は比較的稀であり,その発症機転については不明な点が多い.視力予後については良好とされるが本症例のように網膜症の急速な進展を認める症例の報告もあり,糖尿病性ぶどう膜炎の発症機転や治療に関する考察を加えて報告する.