糖尿病
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症例報告
コハク酸シベンゾリンにより低血糖を来した高齢者の1例
濱本 純子岡内 省三瀬分 淑子蛭川 英典木村 友彦辰巳 文則菅田 有紀子川崎 史子柱本 満松木 道裕加来 浩平
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キーワード: 低血糖, インスリン
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2008 年 51 巻 8 号 p. 777-781

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抄録
症例は83歳女性.発作性心房細動(paroxysmal atrial fibrillation: Paf)に対して,2007年9月から塩酸ピルジカイニドをコハク酸シベンゾリン(CZ) 300 mg, 塩酸ベラパミルを投与され,11月下旬から嘔気・嘔吐,食欲不振,全身倦怠感のため近医を受診した.血糖値25mg/dlと低血糖を認め入院した.入院翌日から,CZによる低血糖を考えて同剤を中止した.5%ブドウ糖液を持続点滴静注したが,血糖値30∼70 mg/dlの遷延性低血糖を示した.低血糖の原因を検索する目的で12月上旬に当科に入院した.低血糖発症時に内因性インスリンの分泌亢進があり,当科入院後に行った絶食試験は陰性で,画像所見でも異常所見なく,インスリン抗体も陰性であった.低血糖時のCZ血中濃度は1,868 ng/mlと著明な高値を示し,CZによる低血糖と診断した.本症例は軽度の腎機能低下にもかかわらず,利尿剤内服および食事摂取不良に伴う脱水がさらなる腎機能悪化を惹起させ,CZ血中濃度の異常上昇を認めた高齢者であり,CZ血中濃度の経時的変化と臨床経過の詳細が確認できた興味深い症例と考え報告した.
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© 2008 一般社団法人 日本糖尿病学会
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