抄録
糖尿病足病変の危険因子の1つに足底圧異常がある.糖尿病神経障害患者の足底圧異常は特徴的であり,前足部圧上昇,前足部に対する足趾部の圧荷重比減少が知られている.これらの足底圧異常には関節可動域制限が関与する.しかし,糖尿病患者における検討では,他の因子により歩行時足底圧は影響を受けてしまう.今回われわれは,健常者において裸足時,足関節背屈制限時(10°, 0°)の歩行時足底圧を計測し比較した.片側制限例(右足部)において,足関節背屈制限によって,足趾部最大圧で有意な減少が認められた.前足部最大圧では有意な上昇がみられた.最大足底圧部位も,足趾部から前足部へ移行する結果であった.これらの圧分布の変化は,糖尿病患者における足底圧異常と酷似していた.また,片側制限例では最大足底圧の変化がなかったが,両側制限例では圧上昇がみられた.したがって,足関節背屈制限は単独で圧分布異常を引き起こし,かつ,圧上昇にも関与する可能性が示唆された.