抄録
症例は56歳,女性.45歳で糖尿病を発症し,内服加療していたが血糖コントロールは不良であった.発熱,頸部の発赤・疼痛のため当科を受診.随時血糖443 mg/dl, HbA1c 11.8%, 著明な炎症反応,および頸部エコーで急性化膿性甲状腺炎を,頸部CTで両側深頸部膿瘍を認めたため,直ちにインスリン持続点滴,抗菌薬投与を開始した.第7病日に降下性壊死性縦隔炎を発症し,頸部切開,胸腔ドレナージを施行するも感染性心内膜炎,真菌・ウイルス感染症を併発し治療に難渋したが,最終的に救命し得た.降下性壊死性縦隔炎は,比較的稀な疾患であるが重篤化し易く,致命率の高い疾患である.糖尿病患者に深頸部膿瘍を発症した際,降下性壊死性縦隔炎への移行も考慮し,適切な抗菌薬や病巣に応じた外科的ドレナージ術の選択が治療する上で重要である.