糖尿病
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受賞講演
糖尿病性血管障害の発症,進展の予防及びその可逆性をめざした新しい病態の解明とリスク因子の同定
柏木 厚典
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2010 年 53 巻 11 号 p. 786-790

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抄録

糖尿病患者の血管合併症の特徴は,微慢性の広範な血管病変で細小血管障害(網膜症,腎症,神経障害)と大血管障害があるが,後者の病態としては閉塞性粥状動脈硬化症と非閉塞性血管硬化病変があり,冠状動脈,脳動脈,下肢動脈血管の閉塞・硬化病変による虚血性臓器障害の原因となる.前者は高血糖と高血圧が最も重要な危険因子となり,一方,後者の粥状動脈硬化病変はLDL-C,低HDL-C/高TG血症,高血圧,高血糖,喫煙などのリスクの集積が問題となり,インスリン抵抗性が重要な背景因子となっている.一方,非閉塞性血管硬化病変は細小血管障害と同様高血糖が重要なリスクとなっている.このように糖尿病性血管障害の発症・進展のリスクには病態によって相違があるが,糖尿病の細小血管障害と大血管障害は並行して進行し,その発症・進展予防と病変の可逆性を可能にするには,リスクの包括的管理の重要性が明らかになった.今後は,更に高危険群の同定に遺伝子多型解析を進めその臨床的応用によるオーダーメイド医療を推進してゆくことが重要である.

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© 2010 一般社団法人 日本糖尿病学会
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