2011 年 54 巻 9 号 p. 743-745
症例は80歳男性.1999年に2型糖尿病を発症,2009年にパーキンソン病と診断された.パーキンソン病で入院中,血糖不良のためスルホニル尿素薬とシタグリプチン併用投与開始し,16日目より水様性下痢が出現した.対症療法をするが血便が出現したため絶食とし,セレギリン,レボドパ,止痢剤,整腸剤以外の全内服薬を中止した.下部消化管内視鏡にて,非特異性大腸炎と診断した.症状,炎症所見が改善したためシタグリプチンのみ再開したが翌日より発熱,下痢,炎症所見が再燃,薬剤性腸炎を疑いシタグリプチンを中止.中止後速やかに症状は改善し以後再燃なく経過した.
DPP-4阻害薬による下痢の発症機序の詳細は不明である.本症例は,DPP-4阻害薬投与が出血性大腸炎の発症に影響を与えた可能性があると考えられたので報告する.