抄録
2008年から3年間に糖尿病治療薬による重症低血糖で当院に救急搬送された2型糖尿病患者135人の解析を行った.74.0±10.0歳と高齢者が多く,血糖値は33.7±10.3 mg/dlで来院時の意識障害の重症度に逆相関した.6人に意識障害の後遺症を認め,後遺症は昏睡時間が強く関与し約8~12時間が境界線であった.原因薬剤はスルホニル尿素薬(SU薬)89人・インスリン38人・SU薬とDPP4阻害薬併用4人・SU薬とインスリン併用3人・グリニド1人で,SU薬が低血糖の遷延する頻度が高かった.SU薬群の特徴は高齢で低血糖の知識がなくHbA1c 6.07±0.82 %と低値例が多く,SU薬の不適切な使用と教育指導に問題があることが示唆された.インクレチンとSU薬の適正使用の注意勧告後も依然多くの重症低血糖患者を認めており,高齢者に対する糖尿病治療薬の安全な使用法について明確にし,啓発する必要があると考える.