2012 年 55 巻 11 号 p. 874-879
症例は76歳男性.20年前に糖尿病と診断され経口血糖降下薬で加療されていたが,2009年7月に血糖コントロール不良のため前医へ入院しインスリンアナログ製剤による治療が開始された.退院後から低血糖が頻回となり,総インスリン値11000 μU/ml, 125Iインスリン結合率89.5 %とインスリン抗体による低血糖が疑われた.Scatchard解析の結果はhigh-affinity siteの親和性が低く,結合能が高い,インスリン自己免疫症候群(IAS)に類似した抗体であった.持続血糖モニター(CGM)にて早朝と昼食後に再現性のある血糖低下を認めたため,その結果に基づいてインスリン調節や療養指導を行ったところ血糖変動パターンは改善した.インスリン抗体によって血糖コントロールが不安定化した糖尿病ではインスリン作用時間の予測がつきにくく治療に難渋することが多いが,CGMによる介入が血糖コントロールの安定化に有用であることを示唆する貴重な1例と考えられたため報告する.