糖尿病
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疫学
1年間に救急搬送された低血糖症例の臨床的背景についての検討
工藤 貴徳森山 貴子柿崎 善史葛西 伸彦
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2012 年 55 巻 5 号 p. 316-321

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抄録

糖尿病患者における薬物療法の導入は,時として重症低血糖を引き起こす.今回,特に医療機関における処置を必要とした低血糖発症の原因を明らかにするために,2009年10月から2010年9月の1年間に当院救急外来に低血糖で搬送された51例(複数回搬送された患者を含む),うち2型糖尿病患者33名の臨床的背景について検討した.HbA1c(以下,HbA1cはJDS値で表記)<6.5 %群は≥6.5 %群に比べて,平均年齢が有意に高値(78.8±3.9 vs 70.3±11.2歳),スルホニル尿素(SU)薬の使用が有意に高率だった(47.1 vs 13.3 %).搬送後,入院となった患者は帰宅できた患者に比べて平均年齢が77.5±8.5歳と有意に高値(p<0.05)であった.治療内容については,入院患者は帰宅患者に比べて,SU薬の使用が52.6 %と有意に高率(p<0.01)であった.
SU薬は臨床で広く処方されているが,高齢者ではSU薬による厳格な血糖管理が低血糖を引き起こす可能性を高める.そのため,臨床の場では薬物療法,とくにSU薬による低血糖の危険性に留意して,常にその危険性と対処法を患者に指導する姿勢が重要と考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本糖尿病学会
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