2012 年 55 巻 5 号 p. 340-344
症例は59歳男性.1991年に橋本病と診断.2003年4月より体重増加に対し減量指導を開始,耐糖能異常も疑われ定期的に血糖値,血中CPR,HbA1cの測定を行っていた.2005年10月に糖尿病ケトアシドーシスを発症しインスリン療法を導入した.その際GAD抗体,IA-2抗体は陰性であったが,2007年11月にGAD抗体,IA-2抗体の陽転化を認め,1型糖尿病と診断した.本邦では全世界的にみると1型糖尿病患者の発症率が比較的低く,本症例のような成人発症1型糖尿病についてはその自然歴に不明の点も多い.本症例は糖尿病発症後にGAD抗体,IA-2抗体の陽転化を確認し,発症前より血糖値,インスリン分泌能の変遷を観察し得た多腺性自己免疫症候群3型であり,疾患概念を考える上で貴重な症例と考え報告する.