2013 年 56 巻 2 号 p. 87-92
症例は75歳男性,血液透析下の2型糖尿病患者.2011年3月,右第1趾の発赤腫脹,潰瘍形成のため当院紹介受診.4月6日当科入院し,局所処置,抗生剤投与により,改善傾向となった.創部および血液培養ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌陽性であった.入院2日目,足病変の増悪を認めないにも関わらず,発熱,呼吸循環動態の悪化を認め,敗血症の状態となった.心エコー上感染性心内膜炎の所見は無く,感染巣検索目的でcomputed tomography(CT)検査を施行,右冠動脈に径約6 cmの動脈瘤を認めた.経過から感染性動脈瘤が感染巣となっていることが強く疑われたが,全身状態不良のため外科的切除の適応外と考えられ,保存的治療を継続した.感染コントロール困難であり,5月6日永眠.病理解剖では動脈瘤内に多数のグラム陽性球菌を伴う膿瘍を認めた.MRSA感染症による感染性仮性動脈瘤と考えられた.