抄録
症例は67歳女性.40歳時に2型糖尿病と診断され内服加療開始,2007年(64歳)より2相性アスパルト注射が開始されたが,2009年より夜間,早朝の低血糖と日中の高血糖が出現し2010年6月に当科入院した.インスリン抗体価,抗体結合率が高値であり,スキャッチャード解析ではhigh affinity siteの低親和性と高結合能を認めた.インスリン製剤の変更を行ったが改善せず,インスリン中止のうえ分割食とミグリトール内服を開始したが,早朝の低血糖は遷延し日中の高血糖は悪化した.このためリラグルチドを開始したところ速やかに早朝低血糖は消失した.開始4ヶ月後に血糖の上昇を認めたため,リラグルチドとインスリンの併用療法を開始すると,早朝低血糖の再発なく血糖の改善を認めた.外来性インスリンに対して産生されたインスリン抗体による低血糖症に対し,リラグルチドの投与が低血糖の改善に有効であった症例を経験した.