2014 年 57 巻 10 号 p. 791-796
65歳男性.1987年検診にて血糖高値を指摘され当院初診,インスリン非依存糖尿病としてSU薬が開始された.1996年入院時の蓄尿中CPRは52 μg/日であった.2007年GAD抗体陽性が判明し,緩徐進行1型糖尿病と診断のうえインスリン強化療法が開始された際の蓄尿中CPRは23.6 μg/日であった.2012年11月,嘔気,下痢の出現4日後の意識障害にて救急搬送された.来院時血糖861 mg/dl, HbA1c 7.5 %,尿ケトン陽性,代謝性アシドーシスを認め,糖尿病ケトアシドーシスにて入院となった.本症例は症状発現後1週間以内のケトアシドーシス,血糖値に比しHbA1c上昇が軽度,発症時の内因性インスリン分泌枯渇という劇症1型糖尿病診断基準を満たし,参考所見である膵外分泌酵素上昇および前駆の消化器症状も認めていた.緩徐進行1型糖尿病に劇症1型糖尿病の合併が疑われた症例を経験したので報告する.