2016 年 59 巻 12 号 p. 811-818
症例は42歳女性,39歳時に乳癌のため右乳房全摘術・腋窩リンパ節郭清術を受けた.トリプルネガティブタイプと診断され,さらに化学療法・放射線療法を受けて標準治療を終了した.患者は治療継続を希望して化学療法を続け,この過程で抗PD-1抗体投与を受けたが同薬最終投与4週後に高血糖・ケトアシドーシスのため1型糖尿病と診断された.血糖値366 mg/dL,HbA1c 9.5 %,βヒドロキシ酪酸7581 μmol/L,血中Cペプチド値測定感度以下,抗GAD抗体・抗IA-2抗体は陰性だった.抗PD-1抗体は既存の化学療法に抵抗性である悪性腫瘍の一部に有効とされるが1型糖尿病を含む自己免疫疾患を引き起こす可能性がある.同薬投与に伴う1型糖尿病と診断された症例の多くでは発症直後より内因性インスリン分泌枯渇が認められている.本例にも同薬投与歴があることより副作用の可能性があると考えた.