抄録
症例は35歳男性.1ヶ月前からの口渇・多尿を主訴に近医を受診し,2型糖尿病と診断されメトホルミン750 mg/日,エンパグリフロジン10 mg/日が処方された.内服直後から反復する嘔吐が出現し食事摂取・服薬も困難となったため当院救急外来を受診された.病歴と検査データから糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と診断し,インスリン持続投与を開始したが,ケトーシスは第6病日まで遷延した.第4,5病日の血中エンパグリフロジンは陽性であり,エンパグリフロジンが薬理学的作用によってケトーシスを遷延させた可能性が示唆された.SGLT2阻害薬はDKAの発症のみならず,ケトーシスからの回復遅延にも寄与する可能性があり,注意を要する.