2016 年 59 巻 7 号 p. 482-488
糖尿病患者で高率に認める尿路感染症の中でも,前立腺膿瘍は症状に乏しく早期診断,加療が困難であり,また血流豊富な臓器であるため血行性播種を伴いやすい.今回我々は血糖コントロール不良の2型糖尿病を背景に前立腺膿瘍を発症し,早期診断,治療ができず,診断時に既に黄色ブドウ球菌菌血症を伴い,加療開始後に全身の多発性筋膿瘍,化膿性胸鎖関節炎を併発した高齢男性の1例を経験した.14週間に及ぶ長期の抗菌薬加療により軽快したが,高齢,認知症,神経障害などを背景に持つ糖尿病患者の診療においては血糖コントロールを保つだけでなく,軽微な非特異的症状でも感染症の合併を考慮する必要があることを改めて強調したい.