2017 年 60 巻 2 号 p. 98-102
症例は78歳男性.X-18年に糖尿病と診断され経口血糖降下薬開始.X-4年10月よりメトホルミン750 mgより開始したところ,X年6月頃よりHb 11.5 g/dL,MCV 109 fLと大球性貧血を認めた.同年11月,ビタミンB12 50 pg/mL未満と低値を示し,メトホルミン投与によるビタミンB12欠乏に基づく巨赤芽球性貧血と診断し,メトホルミン中止およびメコバラミン投与により速やかに改善した.メトホルミンによるビタミンB12欠乏の原因として,回腸におけるビタミンB12-内因子複合体のカルシウム依存的吸収の阻害作用などが報告されている.昨今ビグアナイド薬は,2型糖尿病治療において多用されているが,投与開始後遅発性にかつ徐々に進行する大球性貧血をきたす例もあることより,特に高用量を投与する場合は長期にわたり血液像を観察する必要があると考える.