2018 年 61 巻 4 号 p. 181-188
ミトコンドリア糖尿病は本邦の糖尿病患者の約1 %を占めるが,妊娠がミトコンドリア糖尿病に及ぼす影響はまだよく知られていない.今回我々はミトコンドリア遺伝子A3243G変異を呈したミトコンドリア糖尿病の妊娠経過を姉妹例で観察できた.症例1は25歳女性,妊娠28週時に妊娠糖尿病と診断され,妊娠34週に切迫早産にてリトドリンを投与されてからインスリンが必要となり最大36単位/日を必要とした.症例2は27歳女性(症例1の実姉),妊娠前から糖尿病にてインスリン13単位/日投与していた.妊娠22週頃から急激に血糖コントロールが悪化しインスリンの必要量が増え最大136単位/日を必要とした.2例とも肥満はなく,妊娠中にインスリン必要量が著しく増加した原因としてミトコンドリア機能不全が関与した可能性があり,ミトコンドリア糖尿病では妊娠中に母体の耐糖能が悪化するリスクがあると推察された.