2019 年 62 巻 7 号 p. 406-411
症例は96歳の女性.2型糖尿病で近医通院中(リナグリプチン,インスリングラルギン投与)に水疱性類天疱瘡を発症し,当院皮膚科を受診した.皮膚科通院中に高血糖を指摘されたが,HbA1cは3.7 %と低値だった.大球性正色素性貧血,間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症,網状赤血球数高値,ハプトグロビン低下,尿潜血反応偽陽性から溶血性貧血によるHbA1cの偽低値を疑った.水疱性類天疱瘡治療薬であるジアフェニルスルホン(以下DDSと略す)の関与を考え服薬を中止したところ,速やかに溶血の改善とHbA1cの上昇が得られた.DDSによる溶血性貧血とHbA1c偽低値の報告は稀だが,DDSは我が国で汎用されるDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬により発症リスクの増す類天疱瘡の治療薬として用いられる可能性がある点,本剤による溶血性貧血が海外の報告よりも低用量で発症する点から,今後十分な注意喚起が必要と考えられる.