糖尿病
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症例報告
抗PD-1抗体療法による副腎皮質機能低下を来しその治療後に劇症1型糖尿病が顕在化した1例
熊谷 仁上 紗央理塚越 彩乃松本 愛藤本 真徳小野 啓横手 幸太郎
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2021 年 64 巻 10 号 p. 529-535

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抄録

75歳男性.X年3月に悪性黒色腫・多発転移に対してペムブロリズマブ投与を開始した.8コース投与後の8月中旬に食思不振などが出現し,9月上旬に当科を受診した.低Na血症と好酸球増多,低コルチゾール血症などから副腎皮質機能低下症と診断し,ヒドロコルチゾン15 mgの補充を開始した.この際,血糖203 mg/dL,HbA1c 7.3 %,尿ケトン体(2+)であった.1週間後の再診時,血糖529 mg/dL,尿ケトン体(2+)と高血糖が顕在化した.精査の結果,抗PD-1抗体療法の免疫関連有害事象としての劇症1型糖尿病と続発性副腎皮質機能低下症の同時発症と診断した.本症例のような同時発症は非常に稀であり,両疾患が逆方向に血糖を変化させるため,治療前の高血糖はむしろ中等度に止まった.このことから両疾患を診断することが難しく教訓的な症例であったため報告する.

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© 2021 一般社団法人 日本糖尿病学会
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