2022 年 65 巻 8 号 p. 435-443
2型糖尿病患者(過去の治療中断の既往あり:78例,既往なし:516例)を5年間前向きに観察し,治療中断の発生率を比較した.対象全体における治療中断に関係する因子は年齢と中断の既往(ハザード比:2.17)であった.中断の既往の有無別には,中断の既往あり群でHbA1c(ハザード比:2.12),中断の既往なし群で年齢とBMIが治療中断と有意に関係していた.5年後の治療中断率は中断の既往あり群で23 %と,既往なし群の11 %に比して有意に高頻度であった.5年間の通院を継続した例におけるHbA1cは,観察開始時点で中断あり群で高値であったが,1年目以降は中断の既往なし群と同様に推移した.網膜症,腎症はいずれも中断の既往あり群で高頻度のまま推移した.治療中断の既往は再中断の危険因子であり,治療を継続した場合でも血管合併症の減少が充分に得られないため,治療開始の段階から中断阻止への取り組みが重要である.