2023 年 66 巻 6 号 p. 476-481
症例は60歳男性.体重減少のため近医を受診した際にHbA1c高値を認め,当科紹介.随時血糖値319 mg/dLを示し2型糖尿病と診断された一方で,血清トリグリセリド(TG)値≧10,000 mg/dL(参考値)を認め,血清Na値が生化学自動分析装置による間接法で低値(114 mEq/L)を示した.無症候性であり,血液ガス分析装置による直接法で血清Na値は正常範囲内であったため,高TG血症に伴う偽低値と判断.食事療法・血糖管理・脂質異常症治療薬により,血清TG値の改善に伴い両検査法間の血清Na値の乖離は漸減し,最終的に消失.高TG血症が偽性低Na血症を来すことは広く知られるが,10,000 mg/dLを超える高TG血症による偽性低Na血症の報告は稀であり,貴重であった.検体内の水分割合が減少した病態(脂質異常症,高蛋白血症など)では,血中の電解質に関して直接法での評価が望ましいと考えられた.