症例は60歳男性.体重減少のため近医を受診した際にHbA1c高値を認め,当科紹介.随時血糖値319 mg/dLを示し2型糖尿病と診断された一方で,血清トリグリセリド(TG)値≧10,000 mg/dL(参考値)を認め,血清Na値が生化学自動分析装置による間接法で低値(114 mEq/L)を示した.無症候性であり,血液ガス分析装置による直接法で血清Na値は正常範囲内であったため,高TG血症に伴う偽低値と判断.食事療法・血糖管理・脂質異常症治療薬により,血清TG値の改善に伴い両検査法間の血清Na値の乖離は漸減し,最終的に消失.高TG血症が偽性低Na血症を来すことは広く知られるが,10,000 mg/dLを超える高TG血症による偽性低Na血症の報告は稀であり,貴重であった.検体内の水分割合が減少した病態(脂質異常症,高蛋白血症など)では,血中の電解質に関して直接法での評価が望ましいと考えられた.
症例は17歳男性と15歳女性の兄妹である.学校検尿で尿糖陽性を指摘され受診した.両症例とも当初,耐糖能は正常であったが数年で糖尿病を発症した.精査でHNF-1α遺伝子c.1298C>T(p.T433I)変異が同定されMODY3と診断された.同時にIIb型またはIV型脂質異常症を認め原発性脂質異常症と診断された.他家族もMODY3発症例のみ原発性脂質異常症を発症していた.興味深いことに同遺伝子変異を有する父親はMODY3及び原発性脂質異常症は未発症であった.両症例で糖尿病及び脂質異常症の発症経過やインスリン分泌能など臨床像は類似していた.