2024 年 67 巻 11 号 p. 489-496
症例は82歳女性.肝細胞癌再発に対しアテゾリズマブ,ベバシズマブ併用療法を導入,4か月後に意識障害を主訴に救急搬送された.NH3軽度高値のほか明らかな異常を認めず,随時血糖170 mg/dL,HbA1c 5.6 %であった.入院後も傾眠が持続し,血清Naは1週間で121 mmol/Lまで低下した.血清コルチゾール,ACTHとも低値であり負荷試験を経てACTH単独欠損症と診断した.ヒドロコルチゾン(HC)投与後,空腹時血糖332 mg/dLを認めインスリン頻回注射で管理した.抗GAD抗体陽性であったがインスリン分泌は残存しており,肝性糖尿病およびHC投与の影響と考えた.退院後に急激な血糖上昇を認め,6週間でインスリン分泌は大幅に低下しirAEによる急性発症1型糖尿病と診断した.抗PD-L1抗体投与後に2系統の内分泌障害を相次いで発症し,インスリン分泌低下の経過を観察しえた貴重な症例である.