2024 年 67 巻 6 号 p. 252-256
症例は68歳女性.67歳時に脳転移を伴う肺腺癌と診断され,化学療法が行われた.罹患歴約8年の2型糖尿病があったが,投薬なしでHbA1c 7 %前後であった.その後,化学療法にデキサメタゾンが加わり,血糖コントロールが悪化,シタグリプチン投薬開始となった.癌悪液質を併発し,グレリン作用を有するアナモレリン塩酸塩の内服が開始されたところ,13日後に血糖上昇を認めイプラグリフロジン開始,その4日後,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で緊急入院となった.入院後は内服薬中止し,インスリン加療を行いDKAは改善した.本症例ではデキサメタゾン加療中の担癌患者へのアナモレリン塩酸塩,sodium glucose cotransporter(SGLT)2阻害薬の投与がDKAの原因と推察された.癌終末期における薬剤の複合的な使用はDKA発症につながる可能性があり,注意喚起が必要と考え報告する.