2025 年 68 巻 8 号 p. 334-339
81歳女性.38歳時に2型糖尿病と診断された.77歳時に独居となり,HbA1c 9 %台へ悪化した.インスリン頻回注射および経口血糖降下薬で加療したが,81歳時にはHbA1c 10 %へ増悪し入院となった.インスリン分泌能低下を認めたが,自己注射手技に不安があり,セマグルチド注射(訪問看護管理)を導入し,毎食直前のアスパルトの単位数を統一することで指示を簡素化した.しかし退院2日目の訪問看護時にインスリン誤投与を疑われ再入院となった.軽度認知障害を認めインスリン頻回注射は継続困難と判断し,アスパルトを中止した.デグルデクは自己管理としたが,スマートインスリンキャップを併用し,家族や医療者がインスリンの投与履歴を把握することで,外来治療へ移行できた.認知機能低下のある高齢者において,個々の背景に応じた最新デバイスを活用することでより質の高い支援が期待できる.