糖尿病
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多変量解析法を用いた糖尿病性網膜症の病態に関する研究
岡田 章
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1975 年 18 巻 5 号 p. 525-534

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抄録

223例の一次性糖尿病患者について, 多変量解析法を応用して糖尿病性網膜症の病像を分析し, 眼底所見と臨床所見との関連性について検討を加えた. さらに悪性網膜症への進展の早期予測を試み, 実地臨床面への応用に資することを目的とし, 次の結果を得た.
1) 相関分析, パリマックス分析による解析の結果, 糖尿病性網膜症は深層性出血と硬性白斑を主たる病変とする単純性網膜症群と, 血管新生と増殖性病変を主たる病変とする悪性網膜症群の2群に分け得た. 表在性出血は後者により強い相関を示し, 悪性網膜症への進展に重要な意義を有することを示唆した. 2) Scott分類法による糖尿病性網膜症の程度は収縮期血圧, 罹病期間, 空腹時血糖と有意の相関を認めた. 糖尿病性網膜症を構成する眼底所見別に検討すると, 深層性出血は収縮期血圧, 空腹時血糖, 尿蛋白と, 表在性出血は空腹時血糖, BUN, 尿蛋白と, 硬性白斑は血清コレステロールと, 血管新生は空腹時血糖, 血清コレステロール, 収縮期血圧, 尿蛋白と有意の相関を認めた。一方, 糖尿病性網膜症の進展に関与する因子としては深層性出血, 表在性出血, 空腹時血糖, 尿蛋白が重要と考えられた. 3) 眼底所見と臨床所見とから, 悪性網膜症への進展を予測する1次線形判別関数を導き得た. 判別分析の精度は97.6%であった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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