昭和42年から46年までの5年間に大阪府下で発生した人口動態死亡票 (死亡診断書) 約20万件について調査し, 糖尿病を原死因とするもの1,883件, 糖尿病はあったが他疾患で死亡したもの (糖尿病2次死因) 1,378件, 合計3,261件の糖尿病の死亡を見出した.これらの糖尿病死亡の死因分布を一般人口と比較するとともに, 同様な方法で行われた1955年の米国公衆衛生局の調査ならびに1968-69年の米国Pennsylvania州の調査と対比し, 糖尿病の死因の日米間における相異を検討した.
1) 糖尿病死亡全体の中に占める糖尿病原死因 (死因統計で糖尿病となるもの) の割合は57.7%となり, 実際の糖尿病患者の死亡は死亡統計の約1.7倍と推定された.2) 糖尿病を原死因とするものについて, 同時に記載された死因を1955年の米国の統計と比較すると, 血管障害は米国の72.4%に較べ, 大阪は54.7%で少なく, また動脈硬化性心疾患, 全身動脈硬化症は米国が著しく多い.一方, 高血圧疾患腎症は大阪の方が多いが, 中枢神経の血管損傷は余り差がみられなかった.3) 糖尿病を2次死因とするものの原因を昭和44年の大阪府の死因統計から計算した期待死亡数と比較すると, 腎炎およびネフローゼ, 肝硬変, 高血圧性疾患, 結核が有意に多く, また膵臓の悪性新生物も2倍多く認められた.なお, その他の悪性新生物との糖尿病の関連性はみられなかった。4) 同じく糖尿病が2次死因のものの原死因を米国の成績と比較すると, 心死とくに動脈硬化性心疾患は圧到的に米国に多く脳血管疾患は逆に大阪に多くみられた.腎症はわずかに大阪に多い.また, 結核, 胃の悪性新生物, 肝硬変は明らかに大阪に多くみられた.
以上の検討の結果, 糖尿病患者の死因は日米間に大きな差がみられ, その母集団の特性が大きく反映されていることが見出された.
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