糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
心不全を伴うInsulin Anasarcaの1例
塩田 善朗上田 昭夫松崎 稔有田 禎二堀井 昌子松井 豊
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 18 巻 6 号 p. 664-669

詳細
抄録

glibenclamide10mg/日投与による治療にも拘らずFBS235mg/dlに及ぶ高血糖, 軽度脱水状態肝機能障害の持続を示す35歳男性の非肥満型糖尿病患者に, 入院後actrapidinsulinによる治療を開始したところ, 第3日目頃よりFBSおよび尿糖排泄量の著減などを主とする糖代謝異常の急速な改善がみられた.しかし, 同時に尿量減少を伴わない体重増加および浮腫が出現し, 次第に増強を示した. 第7日目には全身の浮腫に加えて起坐呼吸が生じ, 胸部X線写真上, 胸水貯溜および心拡大を伴う肺うっ血像を認め, congestive heart failureと診断した. しかし, 不整脈心雑音, 心電図上の変化などは認められなかった. この状態はfurosemide使用およびインスリン注射量の減量などにより, 漸次軽快した.
本症例においては, 当初, 軽度の低albumin血症は存在したが, 腎機能には終始異常は認められず, インスリン療法による糖代謝異常の急速な改善以外に, 全身性浮腫の発生を促す積極的因子は考えにくい.
insulin edema-とくに心不全を伴うanasarca-の発生は極めて稀ではあるが, 著明な高血糖状態の改善のために, インスリン注射や経口血糖降下剤による治療が行われる場合には,“insulin edema”の発生の可能性を十分念頭において, 臨床的に対処すべきであると考える.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top