抄録
健常対照群9名および脂肪肝を有する肥満者8名に対してフルクトース (以下F.と略す)(0.5g/kg. 体重/時間) を2時間にわたり点滴静注し血清FFAとTGの変動をF. 投与後4時間まで観察しF. と脂質代謝との関連を検討した. 50gO-GTT上肥満群には軽度の耐糖能異常を認めたが血漿IRIレベルは対照群に比べむしろ高値を示した. 空腹時血清TGは健常群104.0±7.9mg/dl, 肥満群190.1±18.3mg/dl (P<0.001) であり, F. 投与後血清TGは両群とも速やかに減少した後増加したが健常群では90分に最低値を認め240分の時点でも前値に復さなかった. 一方肥満群では60分に最低値を認めその後の再上昇はより速やかで180および240分では前値を越えて増加しており, 前値に対するTG増減量で検討すると健常群に比べ肥満群は180分と240分で有意の増加を示した. 空腹時血清FFAは健常群687.1±102.9μEq/L, 肥満群1222.9±113.8μEq/L (P<0.01) であり, 両群ともにF. 投与終了時の120分まで漸減した後増加したが前値に対する増減量には両群間に有意差を認めなかった. 一方, F. 投与後血糖と血漿IRIは両群とも有意の増加を示さなかった. 以上の結果よりF. 静脈内投与は血清FFAとTGを低下させるがこれにはインスリンの関与は少なく, 一方, F. 投与後3および4時間の時点では脂肪肝を有する肥満者では健常群に比べてより多くのTGが肝から血中へ放出されると考えられた.