糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
剖検において膵脂肪症, 多腺性腺腫症のみられた糖尿病の1例
大西 泰憲三好 康夫藤田 甫
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 19 巻 2 号 p. 250-256

詳細
抄録

膵外分泌組織が脂肪織に置換された膵脂肪症の報告は比較的少なく, その成因についても不明な点が多い.我々は下肢の重症な壊疸があり, 脳軟化症で死亡した糖尿病症例の剖検で, 膵脂肪症と多腺性腺腫症を認めたので, 若干の検討を加え報告した.
患者は68歳女子で, 13年問の糖尿病罹病歴があり, 下肢の重症壊疽のため4回にわたる切断術をうけており, 脳軟化症で死亡した.生前糖尿病治療にはレンテ・インスリン16~32U/日を要したが, 他のホルモン異常や膵外分泌不全による症状はみられなかった.剖検で, 膵は重量70g, その位置, 形, 大きさに異常を認めず, 膵管は十二指腸に開口し, 膵石や管の拡大もみられなかったが, 全長17cmのうち尾側11cmはよく分化した脂肪織により完全に置換されており, 外分泌組織はみられず, 膵管も消失していた.一方ラ氏島は脂肪織に置換された体部, 尾部においても島嶼状に散在しており, Aldehyde-Fuchsin染色でB細胞顆粒は通常に保たれていた.また頭部, 体部には間質の線維化がみられ, 尾部には一部リンパ球の集簇がみられた.
これら膵変化の原因としては, 膵管に何らかの後天的な閉塞機転が存在したことにより, それより尾側の外分泌組織が障害され, 脂肪織に置換された可能性が強いと考えられた.また本症例では膵島非B細胞腺腫, 両側副腎皮質腺腫, 結節性甲状腺腫がみられたが, これらと膵脂肪症の関連はうすいと思われた.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top