糖尿病
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糖尿病に合併した腎乳頭壊死および腎周囲膿瘍の1例
本邦における腎乳頭壊死51症例の集計
栗林 忠信矢島 義忠渡辺 斌岡部 治弥
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1976 年 19 巻 4 号 p. 487-497

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抄録

糖尿病に合併した腎乳頭壊死と腎周囲膿瘍の1剖検例を報告し, 合わせて本邦で報告された腎乳頭壊死の成人例51例について統計的考察を行なった.
患者は55歳, 男. 4年前より口渇, 多飲, 多尿を自覚するも放置. 入院1カ月前より尿路感染症状あり, 次第に乏尿となり, 近医にて高血圧, 蛋白尿, 糖尿を指摘され, 昭和49年1月16日当科入院. 意識は清明. 全身浮腫の状態で糖尿病性網膜症Scott IIIa, 壊疽を伴なっていた. 入院時血糖569mg/dl. 抗生物質, 利尿剤, 正規インスリン投与を行ない血糖はコントロールされた. しかし無尿が続き腹膜灌流を試みたがショックに陥入り死亡した. 剖検で急性腎盂腎炎に伴う腎乳頭壊死と腎周囲膿瘍および糖尿病性糸球体硬化症の所見が得られた.
本邦における腎乳頭壊死の報告は少なく, 1975年6月まで自験例を含めて51例をみるのみである. 年齢は27歳から77歳まで分布し, 平均年齢は54.4歳性別では女性に多くその比は3.6: 1であった. また糖尿病に合併したものが38例であった. 予後は悪く, 特に糖尿病合併例の死亡率は74.3%であった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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