糖尿病
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糖尿病者の電気味覚と舌乳頭, 舌血管の変化について
田村 恂
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1976 年 19 巻 5 号 p. 664-671

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抄録
糖尿病の味覚障害を検討する目的で糖尿病者158例に電気味覚検査を施行し, 1029例の正常者と比較検討した.その結果, 糖尿病者の26%に味覚異常があり, 膝蓋腱反射の低下または消失したものは反射正常者に比し有意の差 (P<0.01) で味覚異常の頻度が高い.また, precomaの症例では血糖値の改善と共に味覚域値の著名な改善がみられた.次に, この味覚異常と糖尿病の病態像との関連について舌乳頭および舌血管の撮影, さらに舌血管造影を行い検討した.その結果, 糖尿病者の舌乳頭は扁平化したものが多く, 手術的に支配神経である鼓索神経を切断された所見と一致し, この舌乳頭の扁平化は電気味覚異常と関連があることから, この電気味覚異常は糖尿病性神経症によるものと考える.また舌乳頭内の血管は正常者に比し密度が粗で, 血管のループが乱れ, 捻転, 蛇行などの走行異常を呈し, 血管造影では血管瘤を思わせる所見がみられた.そこで次に, 舌における糖尿病性細小血管障害について剖検における舌の組織学的所見を検討したが, 舌細小血管にPAS陽性物質を伴った内膜の硝子様肥厚がみられ, 舌における細小血管障害を確認することが出来た.
現時点において糖尿病性舌細小血管病変が味覚異常の神経症の成因と成り得るかは明らかでない.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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