抄録
慢性腎不全における自発性低血糖は現在まで10例が報告されているがその原因は明らかではない. われわれも非糖尿病の慢性腎不全患者に自発性低血糖を認めたので報告する. 患者は42才の主婦で急性腎炎, 妊娠中毒症の既往がある. 昭和50年11月10日, 呼吸困難で入院した. 慢性腎不全, 心不全の診断のもとに血液透析を開始した。昭和51年1月14日早朝低血糖発作 (Dextrostixで10mg/dl以下) を起こした. この4週間前に無黄疸性のGOT, GPT, a1-Pの一過性上昇が認められたが, このための低血糖とは考えられない. 低血糖発作はその後, 2月初, 中旬, 4月初旬にも出現した. 患者は4月20日全身状態悪化し死亡した. 剖検でインスリノーマは否定された。肝の一部にグリコーゲン量低下を示す所見が得られた. 50gGTTは境界型で遷延したIRI反応を示した. Tolbutamideによる血糖低下はIRI反応が良好にもかかわらず緩徐で遷延傾向にあった. Glucagon testによる血糖上昇は不良であった. Insulin tolerance testによる血糖低下は不良であったが, インスリン半減期は12分と軽度延長していた、下垂体, 甲状腺, 副腎, 膵α 細胞の機能低下は認めなかった. 低血糖発作時の血清アラユンも正常であった。
以上の成績から, 肝グリコーゲン量の減少が本例の低血糖の原因と考えられるが, 低血糖からの回復機序の障害も関与していると思われる