糖尿病
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トルブタマイドの生体内分布に関するオートラジオグラフィーによる研究
勝又 一夫
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1977 年 20 巻 5 号 p. 645-651

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抄録

トルブタマイドは内服血糖降下剤として広く使用されているが, 膵外作用や長期連用時の副作用とくにそのメカニズムについてはなお不明の点が多い.これらの諸点を解明する手がかりとして, トルブタマイドの体内分布を体重100gのラットに10μciのトルブタマイド14Cを経口投与して, 経時的にマクロオートラジオグラフィーを作整して検討した.
1. 経口投与されたトルブタマイド14Cは十二指腸, 小腸において3時間後には最大濃度に達し, それ以後, ゆるやかに減少した.盲腸における14C原子は5時間後から逆に増加し始め, 8時間後には最大に達した.直腸においても5時間後から増加したが, 盲腸よりも明白に低い濃度であった.比較的早い時期に胆汁中に14 C原子の急速な増加がみられることから, 吸収された14C原子の一部は胆汁から排泄されるが, 盲腸から直腸にいたる間に再吸収されたことが考えられる.しかし一部は糞便中にも排泄されるものと推定した.
2. トルブタマイド14Cは, 肺, 肝, 腎, 甲状腺に高濃度に分布し, 次いで心, 膵, 副腎, 脾臓に多く, その他の臓器では濃度は少ない.なお膀胱中に早期から高濃度に14C原子の集積がみられた.
3. 骨髄, リンパ管中にトルブタマイド14Cが最も多量に認められ, しかもその14C原子が8時間の観察期間中殆んど減少せず停滞する成績が得られた.
14C原子が高濃度に集まる場所でトルブタマイドの作用が発現すると仮定すれば, 骨髄, リンパ管, 肺, 肝, 腎, 甲状腺, ついで心, 膵, 副腎, 脾臓が作用の場として重要であると思われる

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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