1977 年 20 巻 6 号 p. 753-760
びまん性間質性肺炎と肝硬変を合併し, 著しい高γ-グロブリン血症とマクロアミラセミアを呈したインスリン抵抗性糖尿病の1例を報告した.症例は45才男性, 飲酒家.3年前より糖尿病として経口糖尿剤で加療, 半年前より呼吸困難, 下肢痺痛出現し入院した.両下肺野にVelcro音を聴取, 脾腫, 太鼓ぽち指, 手掌紅斑, くも状血管腫を認めた.糖尿病はインスリン抵抗性を示し各種市販インスリン製剤を試み, 一日92単位でコントロール困難であったが, モノコンポーネント製剤の使用でインスリン需要量は著減した.血清総蛋白9.2g/dl, γ-globulin3.9g/dlと高値で電気泳動でpolyclonalgammopathyを呈し, 主にIgGの増加を認めた.高アミラーゼ血症を認めたのに対し尿アミラーゼは低く, Gelchromatographyおよび抗IgA抗体を用いたAfnnity chromatographyでその大部分がIgAに付着したマクロアミラーゼであった.また, インスリン抗体価はAcid ethano1抽出法で5.4mU/mlと高かったがモノコンポーネントインスリン使用により著減した.免疫沈澱法ではインスリン抗体はIgGであった。本症例ではびまん性問質性肺炎および肝硬変症がありこれにより高γ-ゲロブリン血症をきたし, それに伴ってインスリン抵抗性と同時にマクロアミラセミアをきたしたとも考えられ, おのおのの病態が複雑に関連し興味ある1例と思われる.