糖尿病
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風疹罹患後の耐糖能異常
南條 輝志男三家 登喜夫近藤 渓林 恒司酒井 英夫小地 広昭森山 悦裕猪尾 和弘宮村 敬
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1978 年 21 巻 11 号 p. 1011-1017

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抄録
生後の風疹ウイルス感染により耐糖能異常が惹起された4症例を経験し, 若干め考察を加えた.症例1, 症例2はほぼ同時期に風疹罹患のため当科受診の17歳女性の一卵性双生児で, 両者において当初は耐糖能異常が認められたが, 1ヵ月後には症例1では完全に正常化し症例2では軽度耐糖能異常が残存していた.症例3は12歳女性で8ヵ月前に, 症例4は29歳男性で3年前にそれぞれ風疹罹患の既往歴を有し, 両者とも尿ケトン体強陽性を伴った糖尿病性意識障害のため当科入院した。paired血清を用い各種ウイルス抗体価を測定すると全症例において風疹ウィルス抗体価のみが有意の上昇を呈し, その他のウィルス抗体価はすべて不変低値であったことより, 症例1, 症例2では風疹ウイルスの初期感染が, 症例3, 症例4では風疹ウィルスの再感染があったと解された.一方, 糖尿病状態が風疹ウイルス抗体価の測定に与える影響を検索するため外来患者において糖尿病患者, 非糖尿病患者2群の風疹ウイルス抗体価を測定し比較した.その結果両群に有意差は認められなかった.以上より風疹ウイルス感染により一部の人では軽度耐糖能異常が惹起され, 短期間で完治する場合とそれが残存する場合とがあり, それらの中で風疹ウィルスの再感染により重症糖尿病が惹起されるのであろう.今後同様な症例をより多く発見するように努力し, 風疹ウィルス感染と耐糖能異常との病因的関連性を検討する必要があると考える.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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