抄録
糖尿病患者の心機能を調べる目的で, 30~75歳の糖尿病患者につき左室収縮時相を測定し, 心臓に影響を及ぼすと考えられる系統的疾患を除外した94症例について, 食事療法群 (D-G), SU剤療法群 (SU-G), インスリン療法群 (I-G) に分類し検討を行い, さらにSU剤の影響についても考察した.
ET/PEPおよびETcはI-Gで有意の減少を示し, 同群における将来の心不全発生に留意すべき必要性を感じた.さらに各群ともFBS 140mg/dl以下をA群, 他をB群として検討した結果, D-GおよびI-Gでは, A群がB群に比し有意のET/PEPの高値とICTの短縮を示し, さらにD-GではFBSとET/PEPとの間に逆相関を, またI-GではFBSとICTとの間に正相関を認めたことは, コントロールによる心機能改善を思わせる結果であった.しかしSU-GにおいてはA群はB群に比し有意のET/PEPの減少およびICTの延長を示し, かっFBSとET/PEPとの間に正相関を, またBSとICTとの間に逆相関を認め, さらにSU剤12カ月以上投与例では, FBSと投与期間との間に逆相関を認めた.以上の事実は, SU-GではコントロールによるBS低下に伴う心機能抑制を示唆する所見であった.またSU-G, B群のET/PEP, ETc, ICTはD-G, A群同様良好な値を示し, SU剤の陽性変力作用の結果を推測するものであった.
以上よりSU剤の投与早期における心機能改善効果を, および長期投与による心機能抑制効果を推測した.