糖尿病
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21 巻, 2 号
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  • 中島 行正, 尾山 秀樹, 天工 厚子, 松村 茂一, 西田 聖幸, 堀野 正治, 中沢 信彦
    1978 年21 巻2 号 p. 97-104
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    28例のインスリン治療糖尿病患者に509ブドウ糖負荷試験を行い, それらの血清のインスリン抗体-proinsulin-like components (PLC) 結合物を除去する前後のC-peptide immunoreactivity (CPR) をTotalおよびFreeCPRとして測定した.同時にTotalおよびFreeIRIを測定し, Free CPR測定の臨床的意義について検討した.
    インスリン治療糖尿病患者の空腹時TotalCPRは3.6±4.4ng/ml (M±SD) で健康者のそれ (2.0±0.4ng/ml) より高い傾向を示した.しかしFrccCPRは1.5±0.9ng/mlと有意に低値であった.ブドウ糖負荷後もFrce CPRはTotal CPRより明らかに低値であったが, それらの反応パターンはほぼ平行し, 両者とも頂値は糖負荷後120分に認められた.またFree CPRとFrcc IRIの反応は一般によく一致し, いわゆる遅延, 低反応を示していた.インスリン治療糖尿病患者では, FreeCPR/TotalCPRの割合は, 空腹時57.8土23.8%, 糖負荷後90分で最大値72.8±26.0%を示した.
    これらの患者6例の血清を, 酸性アルコール抽出後ゲル炉過したところ, 全例でPLC分画の増加を認め, その増加の大きいものほどTotal CPRが高い傾向を示した.
    インスリン治療糖尿病患者のFreeCPRは血中C-ペプチドの動態をより正確に示し, このような患者の膵島B細胞機能を知るために有用であると考えられる.
  • カロリックホメオステージスにおける肝の役割
    井口 昭久
    1978 年21 巻2 号 p. 105-115
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    従来よりのカロリックホメオステージスの概念は, 飽食と絶食という対局に対応して組み立てられたものであり, 摂食量の変化には考慮が払われていない.しかしヒトは, 常に摂食している動物であり, 摂食量の変化が直接組織エネルギー産生系に反映されない仕組みが存在するはずである.
    正常者にブドウ糖30gおよび100gを経口負荷し, 静脈血中の血糖, 乳酸, ピルビン酸, FFA, グリセロールおよび呼吸商を経時的に測定したところ, 正常者では負荷後1時間まで, これら代謝産物および呼気ガスの変化は, 負荷量の影響を受けなかった.このことは, 正常者の肝は経口摂取したブドウ糖量を緩衡する機構を備えていることを示すものである.また, インスリン追加分泌は, ブドウ糖負荷量に対応しており, この緩衡機構はインスリンの肝での作用に依存していることを示すと同時に血糖較差を生じさせない機構は乳酸よりの糖新生および脂肪組織での脂肪分解過程へのインスリン効果の反映によるものではないことが示唆された.
    ケトージスを伴い, インスリン追加分泌の認められない糖尿病者の血糖は, 30分よりすでに負荷量の変化を反映した値として表現されたが, この事実は肝でのインスリン作用の消失した場合, 生体は負荷量を緩衡する機構を失うことを示すもので, 糖尿病の代謝異常の特性の1つを表現するものである.
    インスリン追加分泌の認められる種々の程度の耐糖能異常者では, 血糖, インスリン分泌ともに健常者のタイプより, ケトージスを伴う糖尿病者のタイプへ漸次移行していることが認められた.その有意差検定によると, 耐糖能の悪化に伴い血糖較差が早期より出現するようになりインスリンの追加分泌の較差は, 血糖とは逆に小さくなった.また, 乳酸, ピルビン酸の上昇およびFFA, グリセロールの減少の較差も血糖値と略同様に耐糖能の変化に伴い負荷量による較差が増大した.このことは, インスリン分泌較差が, 肝でのこれらよりの糖新生および脂肪組織での脂肪分解の抑制過程に反映されるようになることを示すと同時に, 今後の糖尿病の新しい分類の方向性を示唆するものである.
  • 鷲見 誠一, 桑島 正道, 福本 泰明, 豊島 博行, 森下 寿々枝, 松山 辰男, 河野 典夫, 野中 共平, 垂井 清一郎
    1978 年21 巻2 号 p. 117-125
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    スルフォニル尿素剤 (以下SU剤と略す) 長期投与の際の血糖調節の作用機序を解明するため, 同剤を18ヵ月以上服用している成人型糖尿病患者30例を対象として, 同剤投与中および休薬1カ月後に経ロブドウ糖負荷試験を施行し, その血糖値および血漿IRI値を比較検討した.
    糖負荷試験時の血糖曲線は休薬後有意に上昇し, IRI値については空腹時の基礎分泌は不変であったものの, 特に負荷後60分以降で休薬により著明な分泌減少を示した.さらに, 曲線より下の部分の面積 (総血糖面積, 総IRI面積) を算出し, SU剤投与時に対する休薬時の割合を求めると, 休薬による総血糖=面積の変化は78~190%(平均121%) で, 総IRI面積の変化は37~125%(平均81%) であった.なお, これらの変化と投与薬剤の種類あるいは投与量との間には一一定の傾向は認められなかった.
    休薬による糖処理能の変化からSU剤に対する血糖調節の依存性を推測すると, 11例で総血糖面積が125%以上に増加し, 強い依存性を示した.これらの症例を高依存性群, 残る19例を低依存性群と呼称すると, 高依存性群の総IRI面積は不変の1例を除く全例で減少しており, 投与中止後の平均値は73土6%(標準誤差) で, 低依存性群の85±5%に比較してより大きな減少率を示した.総血糖面積に対する総IRI面積の比は, 低依存性群に属する5例を除く25例で低下し, 中でも高依存性群の低下 (0.126±-0.017から0.062土0.009) が顕著であった.
    SU剤長期投与では, インスリン分泌が投与初期よりも減少することにより, その血糖調節作用に対する膵外因子の関与がしばしば述べられているが, 私どもの得た成績はその考えを支持するものでなく, 長期投与といえどもその血糖調節はインスリン分泌を介してなされる部分の大きいことが示唆された.
  • 特にSU剤の心機能に及ぼす影響について
    星野 桂一
    1978 年21 巻2 号 p. 127-136
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の心機能を調べる目的で, 30~75歳の糖尿病患者につき左室収縮時相を測定し, 心臓に影響を及ぼすと考えられる系統的疾患を除外した94症例について, 食事療法群 (D-G), SU剤療法群 (SU-G), インスリン療法群 (I-G) に分類し検討を行い, さらにSU剤の影響についても考察した.
    ET/PEPおよびETcはI-Gで有意の減少を示し, 同群における将来の心不全発生に留意すべき必要性を感じた.さらに各群ともFBS 140mg/dl以下をA群, 他をB群として検討した結果, D-GおよびI-Gでは, A群がB群に比し有意のET/PEPの高値とICTの短縮を示し, さらにD-GではFBSとET/PEPとの間に逆相関を, またI-GではFBSとICTとの間に正相関を認めたことは, コントロールによる心機能改善を思わせる結果であった.しかしSU-GにおいてはA群はB群に比し有意のET/PEPの減少およびICTの延長を示し, かっFBSとET/PEPとの間に正相関を, またBSとICTとの間に逆相関を認め, さらにSU剤12カ月以上投与例では, FBSと投与期間との間に逆相関を認めた.以上の事実は, SU-GではコントロールによるBS低下に伴う心機能抑制を示唆する所見であった.またSU-G, B群のET/PEP, ETc, ICTはD-G, A群同様良好な値を示し, SU剤の陽性変力作用の結果を推測するものであった.
    以上よりSU剤の投与早期における心機能改善効果を, および長期投与による心機能抑制効果を推測した.
  • 折茂 肇, 井藤 英喜, 白木 正孝, 大山 俊郎, 中野 忠澄, 後藤 一紀, 林 純子, 勘場 貢, 後藤 昌司
    1978 年21 巻2 号 p. 137-142
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病におい全身の血管障害が起こりやすい, ことは古くから知られ, 特に脳梗塞, 心筋梗塞, 大動脈石灰沈着などいわゆるmacroangiopathyの発生頻度が非糖尿病に比して著しく高いことが報告されている.しかしながら糖尿病とmacroangiopathyとの関係については意外なほど不明な点が多く以下次の諸点につき検討を加えた.i) まず第一に60歳以上の老年者につき耐糖能異常と血管障害との関連につき検討した.すなわち60歳以上の老年者, 414名を50gブドウ糖負荷試験の成績よりDM型, BL型およびN型の三群に分類し各群における脳梗塞, 心筋梗塞, 虚血性ST.T変化, 胸部, 腹部大動脈および大腿動脈石灰沈着の発生頻度を調べたところ脳梗塞, 胸部, 腹部大動脈および大腿動脈石灰沈着の発生頻度が耐糖能の悪化に伴い有意に増加することが認められた.ii) 次に血管障害において耐糖能異常が占める役割りを他のrisk factorとの関連において検討した.すなわち一般に血管障害のrisk factorとされている年齢, 性, 骨粗髪化, Ht, 血清中性脂肪, 総コレステロール, 尿酸, フィブリノーゲン, 高血圧および耐糖能異常など10項目全てを測定し得た60歳以上の脳梗塞211名, 心筋梗塞207名, 虚血性心疾患211名, 胸部大動脈石灰沈着212名, 腹部大動脈石灰沈着199名および大腿動脈石灰沈着180名につき各risk factorと各々の血管障害との相関関係を定性回帰分析法を用いて検討した.その結果耐糖能と有意の相関関係を認める血管障害は脳梗塞, 胸部, 腹部大動脈および大腿動脈石灰沈着であることが見出された.iii) 最後に老年者耐糖能異常において何らかの特徴的な血管障害が見出せるか否かにつき検討した.老年者DM群94例につきそれぞれの症例における血管障害の分布様式 (pattern) を調べると13の異なったpatternに分類される.これを主成分分析法により分析すると固有値の大きな代表的な2個の主成分が抽出され, 第一主成分についてはその正の方向に血管障害の少ない群, 負の方向には血管障害の多い群が分布し, 一方第二主成分についてはその負の方向に脳梗塞を有するものが分布し, 正の方向には脳梗塞を有しない群が分布することさらに正の方向には大腿動脈石灰化 (+) の群の大部分が分布することが認められた.以上のことは老年者DM群は血管障害のpatternから脳梗塞を有する群 (DM2) と脳梗塞を認めない群 (DM1) の二群に大別されることを示すものと考えられる.
  • 大学生の50g糖負荷試験
    松浦 千文, 川越 和子, 重信 卓三, 松下 弘, 西本 幸男
    1978 年21 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    昭和46~51年度に実施した広島大学学生の検尿スクリーニングおよび尿糖陽性者の509糖負荷試験成績を総括した.また, 当該年間に実施した糖負荷試験の結果から, 推計学的に大学生の経口的50g糖負荷試験の判定基準を算出し, 考察した.
    その結果, 延検尿受検者は36,408名で, 尿糖陽性者は315名, 0.87%にみられた.このうち, 経口的50g糖負荷試験延受検者は261名で, 正常型226名, 86.6%, 境界型28名, 10.7%, 糖尿病型7名, 2.7%であった.確率紙上における累積度数分布上の±2σ の範囲および平均値土2標準偏差から考察した大学生の50g糖負荷試験の判定基準値は空腹時100mg/dl, 負荷後1時間180mg/dl, 負荷後2時間125mg/dlで, これ以上をdiabetic patternとして管理の対象とすることが望ましいと考えられた
  • 加藤 光二, 綿谷 一知
    1978 年21 巻2 号 p. 151-158
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    従来より標準体重の求め方には種々の方法が紹介されているが, 数式を用いて身長から標準体重を算出する方法としては, Broca法, Jones法などがあり, わが国では8roca法の変法である {(身長 (cm)-100) ×0.9}(kg) の式が慣用されている.しかしすでに諸氏の指摘もあるように, この式は簡単ではあるが, 実際と適合しない点も多い.
    今回, われわれは大阪府八尾市付近在住者の体格を調査する機会を得たので, この成績と過去の諸氏の成績や厚生省栄養審議会の答申資料などを比較検討した結果, 日本人の体格は戦後次第に向上し, 身長はかなりの伸びを示したものの, 青壮年期における身長に対する体重の比率に関しては, 年代差や地方差が少ないことを認めた.
    現在なお標準体重の定義に関して種々問題はあるが, 日本人の青壮年期の体型が年代の変化にあまり影響されなければ, 一応それを日本人の標準体重と考えてもよいのではないかとの観点から, 年代差ならびに地方差の少ない20~39歳の身長別平均体重を標準体重と考えて, 比較的これに近く, しかも計算が簡単な標準体重簡易計算式
    {(身長 (cm)-50) ×1/2}(kg)
    を作成した。
  • 有馬 直道, 炉木 秀生, 河野 泰子, 川 明, 牧 光紘, 田中 俊正, 田辺 元
    1978 年21 巻2 号 p. 159-168
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    胸腔内巨大腫瘍に伴った低血糖発作が腫瘍摘出により完全に消失した1症例を報告した.
    患者は44歳の男性で15年前胸写で左肺野に異常陰影を指摘されたが自覚症なく放置していた.昭和49年暮より早朝空腹時に意識障害を主とする低血糖発作が出現し翌年4月当科に入院した.入院時胸写で左肺野の大半を占める境界明瞭な異常陰影が認められた.入院後も頻回に低血糖発作があり, 早朝空腹時血糖値は15~50mg/dlでIRIも3~15μU/mlと低値を示した.また, glucagonの分泌も抑制されていた。
    Tolbutamideやleucindこ対するIRIの過剰反応は認められず, また、腹腔動脈造影にも異常所見はなくinsulinomaは否定された.肝機能や下垂体および副腎皮質機能にも異常を認めず, 胸腔内巨大腫瘍による低血糖症の診断で腫瘍摘出術を行った.術後低血糖発作は完全に消失した・
    腫瘍は左葉間胸膜を原発巣とする悪性度の低い線維肉腫であり、重量3,020g, 大きさ28×17×11cmで左胸腔のほぼ全体を占めていた.
    腫瘍組織および血清ILA (insulin-like activities) はウサギ血糖下降法・ラット横隔膜法・ラット副睾脂法のいずれによっても認められなかった.腫瘍組織の解糖系酵素活性は人赤血球に比べ単位蛋白重量当たり高い傾向を認めた.この解糖系酵素活性の上昇と低血糖との関連についてはいまだ決定的な結論をひきだすことは困難である.
    本症例の低血糖は腫瘍の糖過剰消費にglucagon抑制状態が加わった可能性の大きいことについて論じた.
  • 中井 継彦, 玉井 利孝, 金谷 法忍, 竹田 亮祐
    1978 年21 巻2 号 p. 169-179
    発行日: 1978/02/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    III型高リボ蛋白血症, 心筋梗塞を合併した興味ある糖尿病の1例について, 糖尿病と斑型高リボ蛋白血症, 動脈硬化性心血管合併症との関連について考案し報告する。患者は55歳男性で, 脳梗塞の既往歴を有する.昭和51年10月31日胸部絞掬感, 胸痛を認め, 急性心筋梗塞症の診断を受けた。同時に蛋白尿, 糖尿を指摘された.心電図上oldanteroseptalおよびacutehighlateralmyocardialin魚rctionと考えられた。冠動脈写では3枝ともに高度の動脈硬化性変化を認めた.5年前糖尿病を指摘され約1年問Acetohexamide500mg/日を服用したがコントロールは不良であった.今回の50gG.T.Tにおける血糖値は前191, 60分, 295,120分229mg/dlでIRIは最高値60分で192μu/mlと低反応であった。眼底はScottL, ScheieS1H1を示し, 腎組織像はnodulardiabeticglomerulosclerosisと診断された。11月16日の血漿脂質, リボ蛋白の分析ではコレステロール318mg/dl, トリグリセリド441mg/dlであり, アガロースゲル電気泳動ではbroadβ, floatingβ リボ蛋白が確認された.VLDL中コレステロールは107mg/dlと高値を示し, VLDLcholesterol/VLDLtriglycerides0.38, VLDLcholestem1/Plasmatriglycerides 0.243であり, III型高リボ蛋白血症と診断した。糖尿病18単位食, Clofibrate2.0g/日にて一時血漿脂質値は正常化したがその後Acetohexamide250mg/日の追加投与にて血糖値は正常化したにもかかわらず血漿リボ蛋白像はIIa型を呈している。Postheparinlipolyticactivityは肝性triglyceridelipase, 肝外性lipoproteinlipaseともに正常対照の約1/2に低下していた.本症例の冠動脈硬化症, 脳動脈硬化症の発症には糖尿病に伴うリボ蛋白代謝異常の関与が推定された.
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