糖尿病
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糖尿病性腎症に関する研究
推計学的予後予測と治療指針の検討
竈門 敬二
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1980 年 23 巻 10 号 p. 913-921

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抄録

糖尿病性腎症の発症・進展におよぼす, 臨床諸因子の影響を, 推計学的手法をもちい検討した. 腎糸球体組織所見を明らかにし得た40症例について, 臨床検査所見11項目と腎糸球体組織所見3項目による正準相関分析を行った. その結果, 臨床検査所見11項目の線型一次結合に基づいて計算した臨床評価点から推定した組織所見と, 腎糸球体顕微鏡所見とが, 90%の合致率を持つことを認めた.
この成績を基礎として, 外来通院患者220症例について, 平均5.2年の期間における経過観察を行った結果, 血糖コントロール状態が不良であるほど, 腎糸球体病変が早期より発症, 進展している事を認めた. さらに, この観察期間における腎糸球体組織所見の経年推移をもとにして得られた推移確率行列から, マルコフ過程により, 糖尿病性腎症の予後予測を行った. 血糖, 血圧, 肥満そして糖尿病罹病期間が, 腎糸球体病変の発症, 進展に関与し, 実地臨床上是正可能な因子の検討が腎症の進展阻止にとって重要であると結論された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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