糖尿病
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糖尿病における小腸性アルカリフォスファターゼアイソザイム出現の臨床的意義
神田 勤大槻 真馬場 茂明中村 幸二上松 一郎
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1980 年 23 巻 12 号 p. 1095-1100

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抄録

糖尿病 (DM) における空腹時血清アルカリフォスファターゼ (ALP) アイソザイムを分析し, 小腸性ALP (i-ALP) 検出率と病態との関連を検討した.健常人 (N群) 50名を対照とし, DM患者286名 (このうち20例は入院時尿ケトン体陽性) において, 入院時と入院2週間後の早朝空腹時血清を試料として用いた.更にDM昏睡9例のALPアイソザイムの変化も観察した.i-ALP検出率はN群で10.0%, DM全体で26.2%であった.286例のDM患者のうち73.8%はi-ALPを検出しなかった (I群).他の例ではi-ALPを入院時検出したが17.1%は2週間のDM治療により消失した (II群).残る9.1%は入院時, 入院2週間後ともi-ALPを検出したが (III群), III群はすべて血液型B・Oで分泌型の例であり, N群のi-ALP検出率と等しかった.血液型B・Oの非分泌型と血液型A・ABの群ではi-ALP検出率はN群とDM群の間に差がなかったが, 血液型B・Oで分泌型の群ではN群 (20.0%) に比し, DM群 (63.9%) で著明に高かった.一方II群はI群に比し, 入院時未治療であるか, control不良例が多かった.またi-ALP検出率がDMケトーシスで35.0%, DM昏睡で55.6%と糖尿病の悪化に比例して上昇することおよびDM昏睡ではinsulin治療により短時間にi-ALPが消失することから, DMにおけるi-ALPの出現には遺伝的背景 (血液型B・Oで分泌型) とともにinsulin欠乏に基づく糖尿病の代謝異常が関与していると思われた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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