糖尿病
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経皮経肝門脈カテーテル法により局在診断し得た多発性インスリノーマ
栗原 義夫小森 克俊黒田 義彦萬田 直紀中山 秀隆中川 昌一秋山 三郎加藤 紘之磯松 俊夫
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1980 年 23 巻 8 号 p. 795-802

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抄録

インスリノーマの手術すおいて最も苦慮する点は術中の慎重な触診によっても腫瘤を発見できない場合である.従来このような場合, 盲目的膵体尾部切除術が行われることが多かったが, その成功率は25~55%と高くない, また良性インスリノーマの約10%は多発性であり, 異所性のものとともす術中に見落される可能性が大きく, インスリノーマ手術例の15~30%は再手術を必要としている.今日までインスリノーマの術前局在診断法として最も信頼されている膵血管造影法でもその確診率は平均約66%と満にできるものではなく, 新たな正確な術前局在診断法の必要性が強調されている.
今回, われわれはインスリノーマが疑われたが膵血管造影が陰性であった16歳の男子すおいて, 経皮経肝門脈カテーテル法により門脈の各所より採血し, その血中IRIを測定したところ, 後上膵十二指腸静脈の門脈への開口部と脾静脈末端部の2ヵ所すおいてインスリン値の上昇を認め, 膵頭部と膵尾部に多発したインスリノーマと考えられる結果を得た.1年後再度, 膵血管造影を試み超選択的膵背動脈造影により膵頭部に腫瘍陰影を発見したが, 膵尾部には全く所見を認めなかった.しかし手術すおいて膵頭部と膵尾部すそれぞれ良性腺腫を認め別出した.
この経験より本カテーテル法はインスリノーマの術前局在診断法として極めて有用であると思われる.

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