インスリン抵抗性を示す糖尿病の中には, インスリン受容体抗体め存在する症例のあることがKahnらによって報告された.
私どもは, すでに報告したヒト胎盤membraneを用いるインスリン受容体抗体検出法により抗体陽性例のチェックを試みた.対象は80単位以上のインスリン注射にもかかわらず, 治療困難な例, 糖忍容力低下がありながら血中immunoreactive insulin (IRI) が空腹時で50μU/m
l以上の症例, 原因不明の低血糖を示した症例の計61例である.
健常者11例, インスリン抗体をもつインスリン治療中の糖尿病6例を対照とした.
正常者血清は
125I-insulinとmembraneの結合に阻害を示さず, 対照のインスリン治療患者血清は,
1251-insulin, membrane, 血清を同時に加える直接法でいちじるしい結合阻害を示した.あらかじめmembraneと血清を艀置, 洗滌後のmembraneに
125I-insulinを加えるpreincubation法では結合阻害を示さなかった.上記61症例のうち6症例は, 直接法のみならず, preincubation法でも著明な結合阻害を示した.また血清より抽出した蛋白部分とくにIgGにこの阻害作用を認めた.
この6例は, 男性2例, 女性4例でSjögren症候群を3例, acanthosis nigricmsを1例に認めた.また4例では, インスリン抵抗性であり, 他の2例中1例は, 自発性低血糖を示した.インスリン受容体抗体の消長は著明で, インスリン抵抗性の程度および低血糖発作の頻度とよく一致した.
本論文は, ヒト胎盤membrane法によりチェックし得た6症例の検討から, インスリン抵抗性を伴わないインスリン受容体抗体が存在する可能性のあることを示したといえる
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