糖尿病
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アデノシンの長期低濃度ブドウ糖液培養ラ島の機能維持における役割
川口 侃香川 昌平村社 恵子松岡 瑛
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1981 年 24 巻 5 号 p. 537-546

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抄録

低濃度ブドウ糖培養液に添加したアデノシンのインスリン分泌能低下抑制作用と培養ラ島の同低下機序の解明のため, 5.5mMブドウ糖, 1mMアデノシン添加5.5mMブドウ糖, 16.7mMブドウ糖の3種の培養液による14日間培養ラ島 (A, B, C島) と単離直後のラ島 (F島) を用いて浮置法により, 経時的検索を行い以下の結果を得た.16.7mMブドウ糖刺激に対し,(1) インスリン分泌: B, C島では有意な分泌を認めたが, F島の約35%に低下していた,(2) 45Ca2+uptake: B島は5, 15, 30分で1.64±025, 6.21±0.35, 7.79±0.44pmol/isletと漸増する有意なC, F島と同レベルの取り込みを認めたが, A島は有意に低値を示した,(3) cAMPcontent: 各培養ラ島とも, F島が15分で38.9±2.3f mol/isletと頂値を示し, 30分まで同水準を維持したのに反し, 経時的に有意な増加を示さなかった,(4) cAMP release;各培養ラ島とも, F島が最初の5分間に, 対照の3.3mM同刺激に比し, 有意な分泌を示したのに反し, 有意差のない35f mol/islet前後の放出を示し, B, C島では以後30分まで, 漸増する同種の放出を認めた,(5) cAMP contentとrdease量の総和: B, C島は各時点でF島と有意差を認めなかったが, A島は著明な低値を示した.以上より,(1) アデノシンは低濃度ブドウ糖培養ラ島のインスリン分泌, 45Ca2+uptake能低下の抑制作用を示した,(2) 培養ラ島のインスリン分泌能低下には, ブドウ糖刺激におけるcAMP産生不全以外にも, 何らかの障害が関与している可能性が示唆された.

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