糖尿病
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糖尿病患者の神経伝導速度と臨床的諸因子との関連と速度予測
多変量解析
工藤 幹彦成田 祥耕小森 哲夫武部 和夫
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1982 年 25 巻 10 号 p. 1073-1079

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抄録
半年以上血糖コントロール状態および治療法が変わらなかった糖尿病患者57名の正中神経伝導速度を測定した. その内訳はF波による脊髄-肘部間, M波による肘部-手根部間の, それぞれ運動神経伝導速度と肘部-手根部, 手根部-手指間の感覚神経伝導速度の計4つである. 年齢, 性, 推定糖尿病罹病年数, 血糖コントロール状態, 網膜症, 尿蛋白, 膝蓋腱反射, アキレス腱反射, 治療法と4つの神経伝導速度との関連性を多変量解析法で分析し次の結果を得た. (1) 9つの臨床検査所見と4つの神経伝導速度の単相関分析では, 4つの神経伝導速度は共に血糖コントロール状態, 網膜症, 治療法と有意の相関を示した. しかし, 偏相関分析ではF波伝導速度のみが, 年齢と血糖コントロール状態と有意の相関を示した. つまり血糖コントロール状態が悪ければ, また高齢であればF波伝導速度は低値を示した. (2) 神経伝導速度の因子分析 (バリマックス法) で得られた2因子と臨床検査所見を偏相関分析すると第1因子と年齢が, 第2因子と血糖コントロール状態, 治療法が危険率1%以下の有意な相関を示した. (3) 9つの臨床検査所見からF波伝導速度を予測する目的で重回帰分析を行なった. 重回帰係数は0.753であり予測値が実測値の土2m/秒, 土3m/秒に入るものは53, 72%であった.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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