糖尿病
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糖尿病患者における血清トリプシン (Immunoreactive Trypsin) 値
小田桐 玲子平田 幸正明石 弘子出村 博
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1982 年 25 巻 6 号 p. 665-672

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抄録

健常者35例, 糖尿病患者315例につき, Radioimmunoassay (一抗体法・ポリエチレングリコール法) による血清トリプシン濃度を測定した.
結果
1. 空腹時血糖値の上昇にしたがい血清トリプシン (IRT) 値は低下するのがみとめられた. (r=-0.25)
2. 24例の未治療糖尿病患者に759ブドウ糖負荷試験を施行.負荷後の血清IRTは血糖値の上昇による変化はみとめられなかった.
3. 非インスリン依存性糖尿病患者において, 食事療法単独群 (49例), 経口血糖降下剤使用群 (75例), インスリン治療群 (86例) の3群における空腹時血清IRTは, それぞれ26.5±10.5ng/ml (M±SD), 28.0±10.6ng/ml, 23.0±9.5ng/mlであり, 35歳以上の健常者の36.0±9.1ng/mlに比し低値であった (p<0.05).
4.インスリン依存性糖尿病37例の血清IRTは, 12.5±8.0ng/mlであり, 35歳未満の健常者の血清IRT29.7±8.1ng/mlより著しい低値であった (p<0.001).又膵疾患を有する糖尿病患者では12.5±10ng/mlと著しく低値であった.
5. 糖尿病性腎症を有するもの10例の血清IRTは, 54.0±16.8ng/mlと35歳以上の健常者の36.0±9.1ng/mlより高い値であった (p<0.01).
6. 糖尿病性網膜症, 糖尿病罹病年数と血清IRTとは, 今回の検討においては関係がみとめられなかった.
7.年齢, アルコール飲酒は血清IRTに影響を及ぼすようであった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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