1982 年 25 巻 6 号 p. 705-711
従来のインスリン注入法ではコントロール困難であった不安定糖尿病2症例に対して小型の携帯型微量注入ポンプ (Sp-5) を用いてインスリン持続皮下注入法による治療 (以下CSIIと略す) を試みた.症例1は男性47歳, 15年間のインスリン療法歴があり, 高度の糖尿病性心筋症による心機能障害, 網膜症 (Scott III b), 腎症, 末梢神経障害を合併していた.血糖状態はHbAIC10.2%, Mean Blood Glucose 370~181mg/dl, M-Value 150~58と不安定型を示した.症例2は女性51歳1年間のインスリン療法歴がありMBG 327~218mg/dl, M-Value167~82, Mean Amplitude of Glycemic Excursion 267~257mg/dlと同様に著しい不安定型を示した.Sp-5によるCSIIは比較的, 生理的分泌に近いインスリン注入型を示し, 使用後の入院時における症例1, 2のMean Blood Glucoseは124,117mg/dl, M-Valueは10.5, 8.6, Mean Arnplitude of Glycemic Excursionは60, 49mg/dlで退院後もそれぞれ92mg/dl, 11.626mg/dlを示した.高, 低血糖発作は完全に消失し, 従来と同様の日常生活が可能となった.症例1での網膜症は増悪傾向が認められたが, 心, 腎機能障害は著明な改善を認めた。
本邦でのCSII療法は未だ特定の研究機関で試みられているにすぎないが, 一般日常臨床の場でも使用可能と思われる.